プロファイル復旧2:Mailデータを一括コピー/プロファイル内ファイルの優先順位
プロファイル復旧1:壊れた環境からのミニマム移行 - とりかごとなり。 では本当にごくごく最低限のファイルのみを移行する方法を書きましたが、「えーっ他のものは持ち込めないの?」というのが気になるところです。
本当にプロファイル全体がぼろぼろになっていて、異常動作や表示が根本的におかしな場合はミニマム移行が望ましいと思いますが、なるべく多くのファイル・設定を旧環境から流用出来るに越したことはありません。
また、同じプロファイル内に複数のメールアカウントを設定している場合、すべてのアカウントについて一つ一つメールデータをコピペしなければならないのか…というのも移行へのハードルを感じる要因と思います。
そこでこの記事では、「アカウント設定をやり直さなければいけない場合でもMailフォルダ以下を一括コピペできないのか」「他にどんなファイルを新環境(プロファイル)に移行できるのか」といったことについて書いていきます。
比較的影響が少ないと思しきものを取り上げていますが、当然これらにもダメージ負ったケースはありうるわけで、「移さない方がいい」と考えられる場合(症状)を橙文字で書いています。
橙文字症状がある場合は無理に移さず、新環境で設定をやり直す方がよいでしょう。
プロファイルの概略についてはプロファイル移行1[プロファイル概略] - とりかごとなり。を、各ファイルの解説についてはTransferring data to a new profile - Thunderbird - MozillaZine Knowledge BaseやFiles and folders in the profile - Thunderbird - MozillaZine Knowledge Baseもどうぞ。
今回も相当長いです…
Mailフォルダ以下を一括でコピーする条件
いちいちアカウントごとにプロファイルフォルダ開いて、必要なのコピペして、また別のアカウントのプロファイルを開いてコピー…をやらずに済ませるための条件です。
理想的には、
- メールデータそのものには問題がないこと
- 不具合・ダメージの範囲が軽微or限定的であること
- prefs.jsを移行可能なくらいの不具合であること
が望ましいのですが、prefs.jsを移行できない(不具合を再現してしまう)時など、「アカウント設定はやり直してもメールデータは一括コピーがいい」の方法を書いておきます。
(複数のアカウントを登録している場合を想定しています)
当然ですが、メールデータそのものに問題がある場合はこの方法でも不具合再現する可能性が高いため、無理せず個別移行をお勧めします。
アカウント情報の登録順を揃える
Thunderbird上でメールアカウントを登録する時、標準設定ではフォルダペインの上から登録順に並びます。
旧環境と同じメールアカウント・登録順で新環境でも登録します。
予めこのようにしておけば、新環境でも旧環境と同様のアカウント登録がされていることになるので、一度Thunderbirdを終了後にMailやImapMailフォルダを一括でコピペすると、旧環境のデータを丸々復元可能です。
「登録順を同じにする」理由は、「@の後ろ(ドメイン)が同じ場合でもデータ移行に支障をきたさないようにする」ためです。上記の例だとアカウントの3と4が該当します。
ドメインが同じ別のメールアドレスをアカウント登録した場合、フォルダペイン上では特に変化ありませんが、プロファイルフォルダ内ではメールサーバ名のフォルダについて、exmaple.com、example-1.comのようにサフィックスが付きます。
冒頭の例だと、旧環境では
- 3の@example.com - example.comのフォルダ
- 4の@example.com - example-1.comフォルダ
のようになります。
このとき、新環境でもしも4→3の順で登録し、Mailフォルダをそのままコピペ…としてしまうと、
- 3の@example.com - example-1.com
- 4の@example.com - example.com
のように入れ替わってしまいます。
これは望ましくないですね。
また、Manually sort folders :: Add-ons for Thunderbirdなどでフォルダの表示順を変えている場合は、登録順にフォルダが並んでいない可能性があるので注意が必要です。
メールデータ以外の各種ファイル(Mail/ImapMailフォルダ内)
メールデータ本体が保存されているMail(又はImapMail)/メールサーバ名のフォルダ下に存在する、メールデータ以外のファイルです。基本的にアカウントごとに存在します。
ニュースフィード(RSS)の設定は後半で触れます。
msgFilterRules.dat
メッセージフィルタの設定が書かれています。
同じメールアドレスでもPOPとIMAPとでそれぞれ登録している場合は別々に設定されます。
これをコピーすることで、別の環境でも同様のフィルタを使用することが可能になります。
テキストベースの設定ファイルであり、テキストエディタで開いて中身を見ることが可能です。
メッセージフィルタに問題が出ている場合は移行せず、新環境でやり直したほうがよいでしょう。
filterlog.html
msgFilterRules.datで設定したフィルターのログが書かれています。
popstate.dat
POPアカウントのみに存在します。
メールサーバにやってきたメールを、どこまでThunderbirdで受信したかの情報が書かれています。
これがない場合は、「まだメールサーバから一つもメールを受信していない」とThunderbirdが判断し、メールサーバからすべてのメールをダウンロードします。
メールの受信周りに問題がある場合は新環境で作り直したほうがよいです。
popstate.datがない場合は自動で再作成されます。
補足:ニュースフィード(RSS)の設定項目
RSSは設定やり直しにより再講読可能な項目ではありますが、「過去の記事を読みたい」というニーズのために書いておきます。
プロファイルフォルダ内のMail/Feedsフォルダ以下に各種ファイルが存在します。
feeds.rdf
RSSの購読情報(購読しているRSSの名称、URIなど)が登録されています。
ニュースフィード名(拡張子無し)とニュースフィード名.msf
購読したRSSの記事本体(拡張子無し)とインデックス(.msf)です。
msgFilterRules.dat
メールアカウントのmsgFilterRules.datと同様です。
プロファイルフォルダ直下のファイル
mimeTypes.rdf
Thunderbird上でファイルを開くとき、どのアプリケーションを使うかの関連付けが書かれています。(.docならWord、.pdfならAdobe Acrobat Reader DCのような)
オプションの添付ファイル>受信で確認できる情報です。
プログラムの関連付けに問題がある(指定したアプリケーションで開かない、反応しないなど)がある場合は新環境で以下略。(自動で再作成されます)
training.dat
迷惑メールデータの学習内容が記録されています。
迷惑メールの学習に問題が出るようなケースでは再作成以下略。
prefs.js
メールアカウントの設定情報、設定エディタ(about:config)の設定内容などが書かれる最重要ファイルです。
これを移行できるとメールアカウントの設定を省略可能*1で、移行の苦労が大幅に軽減されるため、心情的には「移したい」ファイルの筆頭でもあります。
が、重要であるが故に不具合のダメージを最も蒙りやすいファイルでもあるため、「何かよくわからないけどとにかくおかしい」「どこが原因かがさっぱりわからない」「起きている現象が大規模・深刻である」の場合は無理に移さず、初めからアカウント設定をやり直したほうが良いケースもあるあるです。
「移せればめっけもの」くらいの印象でいた方がよいかもしれません。
「アカウント設定をイチからやり直す」の場合は、アカウント設定「だけ」を施したプロファイルを別途バックアップしておくと、今後トラブルに当たった時の復旧が楽になります。
key3.db, logins.json, cert8.db
パスワード関連のファイルです。鍵のデータベースやパスワード、認証情報が含まれています。*2
必ず3つ一組でコピーする必要があります。
prefs.jsが移せないようなケースでは、アカウントの再設定も兼ねてこれら認証関連もやり直したほうがよいでしょう。
chromeフォルダの中身(userChrome.css、userContent.css)
Thunderbird画面上の表示(文字の大きさ、色、背景色など)の設定をcssに書いている場合はchromeフォルダをそのまま新プロファイルにコピペで対応可能です。Thunderbird起動時に自動反映されます。
cssの中身が原因で表示に問題が出ている場合は移行しないor適切に修正後に移行がよいと思います。
移行しない方がよいもの
アドオン関連は不具合誘発のリスクが高いため*3、不具合発生時は旧環境からは移行しない方が望ましいと思います。
「アドオン内で設定した内容を新環境でも使いたい」の場合は、アドオンごとに設定内容の書き出し、バックアップが取れることもあるので利用するとよいでしょう。